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吉岡斉『原発と日本の未来―原子力温暖化対策の切り札か』岩波ブックレット№802、2011年2月

原子力発電は1980年代末から、20年以上にわたる停滞状態を続けていることを、皆さんはご存知でしょうか。2010年1月1日現在の、世界の発電用原子炉総基数は432基で、1年前と変わっていない。これにより90年代に続き2000年代も、世界の総基数は420~430基台を推移することとなった。
70年代から80年代半ばにかけて、原発の新増設ペースは年間20~30基であった。原発の総基数が400基を突破したのは、チェルノブイリ3号機事故の翌年の87年であり、その翌88年には420基台に到達した。しかしその後は横ばい状態が続いている。世界で年間数基が廃炉となる一方で、数基が新設されるため、総基数は横ばいが20年以上も続いているのである。ただし新しい原子炉ほど大型となる傾向があるため、総設備容量は長期的傾向としては微増を続けている。2010年1月1日現在の総設備容量は3億8,915万キロワットである。
さて、これまで年間20~30基ペースで建設されてきた原発は、当然寿命が終われば年間20~30基ペースで廃止が進んでいくのである。そして今回の福島原発事故を考えれば、省エネルギーや再生可能エネルギーなどの普及が進み、そして原子力を火力でリプレイスするケースも含め、リプレイス全体の規模は小さくなると思われる。原子力発電の拡大シナリオなどは、まさに非現実的であると著者は指摘する。
菅首相が派手なパフォーマンスでアジア諸国に売り込みをかけていたのを思い出すが、事実は上述したとおりである。
今日の原子力政策の特徴は、政府の手厚い指導・支援措置によって電力産業界の原子力発電事業を支え、その経営リスクを軽減し、それによって原子力発電規模の堅持と核燃料再処理路線に必要なバックエンド事業の整備を進めることを、主要課題としてしていることである。原子力発電が本質的にハイリスク事業であることを考慮すると、電力業界の経営リスク軽減は、国民が高いリスクを肩代わりすることを意味する。したがって国民は主権者・納税者・消費者として、これに無関心では済まされないというのが、著者の主張である。
 もう一つ、評者が強調したい点は、著者の「優遇措置ではなく罰則措置を」という主張である。火力発電も原子力発電も、両者共に有害物質を排出する。火力発電には高い税率の炭素税や厳しい上限つきの排出量取引制度を導入すべきである。他方、原子力発電には放射線・放射能封じ込めの対策コストを、政府が肩代わりするのではなく事業者に負担させる仕組みを導入するのである。この領域では現在、手厚い政府負担が行われているので、それを原則として全廃することが適切である。たとえば安全規制コストは事業者から徴収する原子力安全税によってまかなうのが適切であり、原子力賠償法についても、政府負担を全廃するか、または過酷事故を起こした電気事業者を清算し、それでも被害者に支払えない分についてのみ実施するよう見直す必要がある。
著者は、政府が原子力発電を優遇する正当な理由は、諸特性を一覧する限り乏しいと述べる。政府が税金により負担してきた一連の支援(立地支援、研究開発支援、安全規制コスト支援、損害賠償支援等)のコストは本来すべて事業者によって負担されるべきであり、それがエネルギー間の公正な競争条件を確保する上で不可欠であると主張する。
このように原子力発電事業に対する優遇をすべて廃止し、それでも電力会社が原子力発電の新増設や、使用済燃料の全量再処理や、高速増殖炉実用化路線の護持を望むのならば、政府が万全の保安・安全規制を講じた上で、全面的な自己責任においてやっていただくしかないと述べる。それが自由で公正な社会の当然のルールである。
本書は、福島原発事故直前に書かれた著書であるが、それだけに原子力のそもそも論を学ぶのにちょうど良い教材である。
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