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「社会保障・税一体改革関連法」成立に思う

「社会保障・税一体改革関連法」成立に思う

8月7日夜、都内でジャーナリストの堤未果さんの話を聞く機会がありました。彼女は、「日本人はいま、3.11(東日本大震災)後のショック・ドクトリンに陥っている」と言いました。それは、彼女のアメリカの友人からの忠告だそうです。今から約10年前のアメリカでは、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件後45日間で「米国愛国者法(USA PATRIOT Act)」が成立しました。愛国者法は、米国内外のテロリズムと戦うことを目的として政府当局に対して権限を大幅に拡大させた法律です。入国者に対し無期限の留置が可能な権限を与え、司法当局によって行われる管理権者の承諾無く行われる家宅捜索(「こっそり忍び寄り盗み見る」調査)をできるようにし、そして連邦捜査局に対し令状抜きで電話、電子メール及び信書、金融取引の記録を利用することを拡大して認めています。アメリカでは、国民が抵抗できないパニック状態のときに、企業に都合の良い法律を通しています。堤さんは、「アメリカは国が株式会社化している」といいました。
ナオミ・クライン『The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism』(『ショック・ドクトリン:惨事便乗型資本主義の正体を暴く』は、戦争、津波やハリケーンのような自然災害、政変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人びとが茫然自失から覚める前に、およそ不可能と思われた過激な市場主義経済改革を強行したことを告発しています。アメリカとグローバル企業による「ショック療法」は世界に何をもたらしたか。3.11以後の日本を考えるためにも必読の書だといわれています。

さて、私が驚いたのは、翌8日夜のことです。家に帰りテレビのニュースに目をやると、野田首相と自民党の谷垣総裁が無言のまま画面に映し出されていました(民自党首会談)。そこに、公明党の山口代表が加わり会談は終了しました(民自公党首会談)。いったい何が起こったのかまるでわかりませんでしたが、野田首相は会談終了後記者団に「3党合意を踏まえて、法案は早期に成立を期す。成立した暁には近いうちに国民に信を問うと確認した」と説明しました。
少し前までは、自民党の谷垣総裁は独自の内閣不信任案・問責決議案提出を指示したと報じられていました。消費税増税の「3党合意」は破綻し、増税法案も廃案もありうると私は理解していました。しかし自民党は内閣不信任決議案提出を取りやめ、「国民の生活が第一」などの7野党提出の内閣不信任案は9日に衆院本会議で民主党の反対、自民、公明党の欠席で否決され、そして10日には消費増税関連法案は参議院本会議で民主、自民・公明3党の賛成多数で可決、成立しました。
今国会で成立した消費増税関連法案は、2014年4月から8%、15年10月に10%に引き上げるもので、年金改革や後期高齢者医療制度について議論する社会保障制度改革国民会議の設置などを盛り込んでいます。7月27日に開会し、8月12日に閉会したロンドンオリンピックで、国民が競技に目が釘付けのときでした。野田首相は、本来絶対総理が口にすべきでない「解散」を言って会談をまとめました。法案成立を受けて会見した野田首相が「一体改革についての意義を語る前に2つのことからおわびしないといけない」と切り出し、公約違反と厳しい経済状況での負担増に対する異例の弁明をせざるを得ませんでした。民意を気にしてのことです。民・自には財界、外国からのカナリノプレッシャーがかかったものと思われます。
共同通信社が実施した調査(11、12日)では、成立した消費税増税法にもとづく税率の引き上げに反対と回答したのは56.1%で、賛成の42.2%を大きく上回りました。「毎日」の調査(11、12日)では成立を「評価しない」の53%に対し、「評価する」は44%。「読売」(11、12日)でも「一体改革」関連法の成立を「評価しない」が49%と、「評価する」の43%を上回っています。「毎日」では、消費税の引き上げが「暮らしに影響する」と答えた人は「大いに」(47%)と「ある程度」(45%)を合わせ、計92%にのぼるという結果も出ています。

消費税増税をめぐる今回の政局の中で、2009年総選挙時の野田首相の街頭演説はあまりにも有名です。「(マニュフェストには)ルールがある。書いてあることは命がけで実行する。書いてないことはやらない」。政権交代を実現させた前回総選挙で民主党に投票した人のうち、それまで悪性を続けてきた自民・公明と手を組み消費増税をしてほしいと思っていた人はどれだけいるでしょうか。野田首相に消費税増税法案を提案する権限を与えた覚えがある有権者はこの日本にいるのでしょうか。
首相は、大増税の成立を受けた記者会見でマニュフェストに明記していなかったことについて「おわび」を口にしました。しかし、明記していなかっただけではなく、総選挙時の鳩山由紀夫・民主党代表は、「消費税を引き上げない」と公約しました。野田首相の街頭演説にはまだ続きがあります。それは「書いてないことを平気でやるって、これおかしいことだと思いませんか」とも述べているのです。
以前とまったく矛盾する言動をしても謝れば許されるとの屁理屈からくる「おわび」なのでしょうか。本来なら国民生活にきわめて大きい影響のある法案を成立させて、その後に国民の信を問うのではなく、成立の前にこの法案が是か非か、国民に即問うべきでした。公約していないことに政治生命をかける政治を審判するため、一刻も早く解散して国民に信を問うべきです。

消費税は1989年に竹下登内閣が税率3%で導入しました。94年に村山富市内閣で引き上げ法が成立し、97年に橋本龍太郎内閣が5%へ引き上げました。今回の消費税増税法では景気動向によって増税を一時凍結できますが、2014年の引き上げが実現すれば、17年ぶりの消費増税となります。政府は10%への引き上げで年13.5兆円の税収増を見込みますが、それでも基礎的財政収支(プライマリーバランンス)を20年度までに黒字化する目標の達成には消費税約6%分の財源が足りず、さらに負担増を迫られる可能性が高いと思われます。

『読売新聞』(8月10日)の永原伸政治部長は、「3党がバラバラでは、選挙後にどの党が政権の座に就いたとしても、一体改革の具体化は無論、原発・エネルギー政策やTPP参加など山積する内外の諸課題に取り組むことは至難の業である」と述べています。しかし他方で、「3党は『強さ』を持ち合わせている」といいます。それは、社会保障制度改革も、小泉内閣以降の歴代内閣が挑んで果たせなかった懸案だということです。永原氏は、毛利元就が3人の息子に諭した「1本の矢なら簡単に折れても、3本の矢なら容易に折れない」の逸話を引き合いに出して、「3党が協力すれば多くの課題を前に進めることが可能となろう」と檄を飛ばしました。
今回の消費税増税をめぐる政局のマスコミの捉え方は、これほど国民の考えとずれているのです。『読売新聞』だけではありません。他の新聞社も似たり寄ったりの主張をしています。今回のような3党合意で決める政治は、かつては「密室政治」や普通なら「談合政治」といわれたりします。そもそも民自公3党だけで物事を決めて、国会で議論しないなら、他の野党はいりません。国会とは何か、民主主義とは何か、永原氏はわかっているのでしょうか。国民生活を直撃する消費税増税法案を党利党略でもてあそぶ談合政治に怒りを覚えるのが普通ではないでしょうか。

さて、話を最初に戻します。ナオミ・クライン『The Shock Doctrine: The Rise of Disaster Capitalism』は、戦争、津波やハリケーンのような自然災害、政変などの危機につけこんで、あるいはそれを意識的に招いて、人びとが茫然自失から覚める前に、およそ不可能と思われた過激な市場主義経済改革を強行することです。堤さんはどんな法律が議会にかかっているのか、注目する必要があるといいます。たとえば、契約社員や派遣社員ら労働期間が契約で決まっている労働者が、5年を超えて働くと「無期雇用」に移行する制度が、今国会で成立した改正労働契約法に盛り込まれたことは、多くの国民の知らないうちのことでした。いつの間に成立したか私も知りませんでした。これは、ナオミ・クライン流に言えば、ショック・ドクトリンの影響ということになるのでしょうか。労働者側は雇用安定化への一歩と期待しますが、無期雇用を敬遠する企業では労働期間が5年に達する前に雇い止めが増加する懸念もあります。どちらかというと企業に有利な改正ということになるかもしれません。
安心して働ける環境は、日本の経済や技術にも貢献します。本来なら国は様々な職種の実態を考慮しつつ、無期雇用への転換を図りやすい環境作りを行うべきです。

堤さんの話の延長で考えると、日本はこれから大変な事態を迎えることになります。しかし、アメリカのように、東日本大震災という大惨事があったことは事実ですが、アメリカのように99%に対する1%のスーパーリッチたち巨大資本が、日本の市場を食い尽くすとは私には考えにくい気がします。
堤さんがいうように、「日本人はいま、3.11後のショック・ドクトリンに陥っている」のかもしれません。しかし、財界(資本家)や政治家やマスコミをつぶさにみると、アメリカと日本では明らかに違います。
かつて「少数意見が多数意見へと変わっていく可能性を考えれば、少数意見の尊重がどんなにたいせつか」「(議会における)敗者の議論が正しいと判断される場合、新聞はこれを将来への証拠として正確に報道して記録にとどめておくべき」と書いた新聞人がいます(森恭三『私の朝日新聞社史』)。まして今回は消費税増税法案反対が多数の声です。この声が政治の現実に反映しないわけはありません。そのためには、総選挙での国民の審判が必要です。
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