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奥山正司「都市貧困老人の家族生活史の分析――不安定就業階層の老後問題」

山谷地域での高齢者の生活史分析を行った研究業績には、奥山正司らの「都市貧困老人の家族生活史の分析――不安定就業階層の老後問題」1)がある。まず奥山は、佐藤嘉夫とともに「不安定職業階層の老後問題」(『老年社会学』)で、山谷地域での高齢者の生活史分析を行っている。そこで明らかになったことは、第一に、“高齢日雇労働者”として、人生の最期をむかえた人々も、そこにたち至る過程は、非常に多様かつ複雑えあり、その意味では、高齢日雇労働者にも階層性があることがあきらかになった。ほか、第二に、それは主として社会階層移動―層的転落の違いとしてとらえることができ、その移動―転落の類型は、大きく三つ――「不安定階層停滞型」「一般階層青年期転落型」「一般階層壮年期転落型」――に要約できること、そして第三に、それぞれの階層移動の仕方、すなわち世帯の経済的浮沈の有り様によって、家族の生成、発展、消滅が大きく条件づけられていること、そして最後に、比較的安定した職業生活や家族生活を体験している「一般階層壮年期転落型」が多く、調査の対象となった、「山谷」地域への新入者に占める高齢者の割合が年々高くなっていること、そのことからより上位の階層や「山谷」以外の地域の問題との結びつきをもっているという意味で「山谷」地域にみられる高齢日雇労働者の老後問題は、一般的性格をもっていることなどが明らかになったのである。
本論文はそのうえで、さらに家族生活史の分析を詳細に行うことによって、主として家族発達の諸段階における家族構成の変化を跡づけようとした。そしてそのことを通して家族構成の変化に含まれる家族の未発達、崩壊といった家族解体(family disorganization)の現象は、先に見た社会階層移動の要因、時期などと、どのように結びついているかを考察しようとした。
その結果、奥山は、3つの論点を明らかにし、そのうえでさらに3つの問題提起を行っている。一つは、高齢日雇労働者の家族生活史は、一般の労働者のそれと、周期的にみても非常に異なるという意味で、一面では特殊な問題を含んでいるということである。それは主として、婚姻関係の形成の遅れと家族周期の不規則・不連続として捉えられた。そして、補足的にではあるが、その中には寿命(life span)が短く、その意味で、本人の家族周期の晩期が欠落しているといった問題も含まれるということも知られた。
二つには、一般の勤労者と異なった周期を辿るとしても、高齢日雇労働者層として、ある一つの周期パターンにすべてが包括されるものではなく、個々の労働者の家族生活史は、複雑かつ多様な面をもっていることである。三つ目は、相対的に安定した職業生活、家族生活を有したもの(奥山がいう、「第Ⅲ類型」)ほど、一般の勤労者に近い周期をもつことである。奥山がいうように、これらの結果を一般化することは困難であるが、そこからは3つの論点が抽出された。
まず一つ目は、生活周期(家族周期)の安定化を計るということであろう。社会保障政策は、多くの点で安定した生活周期を前提としている。その意味で、仮に社会階層的に異なった生活周期を描くとしても、何よりも、それなりに周期そのものが安定しているということが前提とならなければならない。それは、主として職業生活での安定、すなわち、失業対策や労働の保障ということによって、基本的にはなされるであろう。階層的に上下の差があっても、それなりに生涯を通して安定した職業生活を得るということが重要なのである。そ奥山の論文でみられた老人層の多くは、戦争の影響をまともに受けており、ことに家族周期の第2、第3段階にあったものほど、大きな打撃を受けたといえた。これらの層における老後問題は、まさに戦争問題であり、その最低生活保障に対する国家責任が一層明確にされなければならない。
二つ目は、非常に複雑かつ多様な生活周期をもつような場合には、職業生活の安定を踏まえながら、単身、欠損、多子などの家族の縮小あるいは膨張といった出来事に対して、それぞれの原因に応じて、生活保障を行うことが必要であると考えられた。
三つ目は、特に、比較的恒例化してから転落するといった問題は、非常に一般的性格を帯びる可能性をもっている。家族の老親扶養機能が衰退し親族網の縮小・弱化しつつあるわが国の現状は、比較的上位の階層でもいっきょに、日雇といった最下の層にまで転落しかねないという事実を示している。このような問題対処するためには、そうした転落をくいとめるためのディフェンスが、いくつかのレヴェルにわたって整備されることが必要なのではないか、と問題提起している。
以上の問題的は、一般化できるかどうかは今後の実証的研究の積み重ねを待たねばならない、と奥山は述べているが、具体的な社会保障政策の対応が検討されねばならない、との指摘は、筆者の問題関心とまったく同じであると述べることができる。

注1)奥山正司「第10章 都市貧困老人の家族生活史の分析――不安定就業階層の老後問題」『大都市における高齢者の生活』法政大学出版会、2009年3月。本書の初出は、奥山正司・佐藤嘉夫「都市貧困老人の家族生活史の分析――続・不安定就業者階層の老後問題――」『老年社会学』№10、東京大学出版会、pp.23-35、1979年、である。
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