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門倉貴史『本当は嘘つきな統計数字』幻冬舎新書191、幻冬舎、2010年

本書は、世の中に存在する、多くの統計数字の嘘について述べている。そんな「統計数字の嘘」の中から、私が関心を引いた嘘を一つだけ紹介したいと思う。それは、「『ひも付き』の学術論文・調査レポート」である。
 自然科学・社会科学の学術論文や調査レポートには、まったく同じテーマを扱っているにもかかわらず、結論が間逆になるケースが多々存在する。実験の方法やアプローチの仕方、サンプルの数や選び方などによって、結論が変わってくるのであれば問題はないが、学術論文や調査レポートの中には、「最初に結論ありき」で、かなり恣意的に作成されているものもあるので、読み手はその点に十分な注意が必要である。
 問題は、どういった論文や調査レポートが恣意的になるのか、ということである。「最初に結論ありき」で作成された学術論文や調査レポートは、いわゆる「ひも付き」であることが多い。つまり、研究者や研究機関が特定の企業や団体から資金援助を受けているようなケースである。
 「ひも付き」の研究では、利益相反となって中立的な視点に立てなくなる。学術論文や調査レポートの結論が資金援助をしてくれている特定の企業の意向に沿ったものになりやすい。こうしたバイアス(偏向)を、「スポンサー・バイアス」と呼ぶ。
 1998年に米国で発表された論文「Deborah E. Barnes and Lisa A. Bero., Why Review Articles on the Health Effacts of Passive Smoking Reach Different conclusions. JAMA. 1998;279:1566-1570.」には、調査レポートや学術論文の結論が恣意的なものになる可能性が極めて高いことが示されている。
少し内容を紹介すると、80年から95年までの間に発表された受動喫煙の有害性に関する研究論文について、それらの研究論文の結論が「受動喫煙は有害ではない」と「受動喫煙は有害である」のどちらになっているかを調べた。その結果、106の論文のうち37%に相当する39の論文が、「受動喫煙は健康に害を与えるものではない」という結論になっていた。また、この論文では、受動喫煙の有害性に関する研究論文の執筆者がどういった団体から資金援助を受けているかも調べている。
その結果、「受動喫煙は健康に害を与えるものではない」と結論づけた39の論文のうち、74.4%に相当する29の論文の執筆者が、タバコ会社から資金援助を受けるなど、タバコ会社となんらかのつながりを持っていた。
タバコ会社とつながりのある研究者が執筆した論文(第1グループ)とタバコ会社とは何のつながりもない研究者が執筆した論文(第2グループ)について、「受動喫煙は健康に害を与えるものではない」という結論になるオッズ比(ある事象の起こりやすさを2つのグループで比較して示す統計学的な尺度)を計算すると、第1グループでは88.4にも達し、それだけ結論が恣意的なものになりやすいということを証明した。
これらの事実に基づいて、この論文は次のように締めくくっている。すなわち、調査研究論文を発表する際には、執筆者がどの団体とつながっているかを明記すべきであり、また研究論文を読む人たちは、その論文が「ひも付き」であるかどうかを確認したうえで論文の結論の正当性を判断すべきだと結論づけている。
著者は、以上の論文を引用しながら、実は日本でも調査レポートの中立性に疑問符がつくような問題が起こっていたと指摘する。それは、厚生労働省研究班が2006年10月に発表した、「インフルエンザ治療薬タミフル服用の有無によって異常行動の現れ方に差異は見られない」という調査結果である。この調査は、約2800人の患者を対象とした調査であった。
発表後、この研究班に属していた大学教授だった人物の講座あてにタミフルの輸入販売元である中外製薬から、奨学寄附金として2006年度までの過去6年間で合計1000万円が支払われていたことがわかった。この研究班に属していたほかの大学や研究所にも製薬会社から奨学寄付金や研究費が支払われていた。
もちろん、利害が絡む企業から研究に奨学寄附金が支払われていたからといって、ただちに調査結果が歪められているという推論が成り立つわけではないが、利益相反による調査結果の中立性が疑われないようにするためにも、著者は利害が絡む企業からの寄付金は受け取るべきではないと主張している。私もまったく同感である。
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