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アルベルト・イァーネス/佐藤紘毅訳『イタリアの協同組合』緑風出版、2014年

本書は、イタリアで2011年に刊行された≪Alberto Ianes, Le cooperative. Carocci editore,Roma 2011.≫を底本として著者が内容を加筆・修正したものの翻訳である。したがって、著者と訳者の協議により、いくつかの部分の底本と異なる叙述を加え、また大幅に削除した部分もある。最新の資料(第八章)も新たに加えた。したがって、底本カロッチ書店版の忠実な翻訳ではない。
 本書は、一読したら明白であるが、イタリアの協同組合に関心を持つ人々を対象として書かれた協同組合入門書である。イタリア人にとって馴染みのある言葉や固有名詞も日本の読者にとっては疎遠なものが多い。日本の読者の解読に資するよう、訳者の判断で随所に「訳注」が付されたのはそのためである。
 著者のアルベルト・イァーネス氏は、現在は「トレント県 歴史博物館財団」付属「協同組合経済史センター」の研究員を務めている。トレント大学はここ三十年来の協同組合研究の分野で、ボローニャ大学と並んでめざましい成果を発信している研究機関の一つである。トレント大学における協同組合・社会的企業研究の主導者の一人は、わが国でも「エメス調査ネットワーク」の主導者として知られるボルザーガ教授である。本書の著者イァーネス氏は、そうした恵まれた学問的環境のなかで協同組合研究にいそしんだ俊英である。彼は2006年にボルザーガ教授と共同して、社会的協同組合の歴史と現状を扱った労作『連帯経済』と著しており、社会的経済、協同組合、社会的企業の研究分野においてすでに第一線に立っている気鋭の研究者である。
 「社会協同組合」は「社会的企業」の先駆例・成功例として広く注目されており、わが国でも民主党政権下の「“新しい公共”推進会議」での「内閣府 政府統括官(経済システム担当)委託調査」(http://www5.cao.go.jp/npc/pdf/syakaiteki-kaigai.pdf)のなかで取り上げられるまでにいたっている。

社会協同組合が付加する価値は相互扶助的便益でなく公共的便益
 イタリアでは1942年の民法典をもって相互扶助目的が協同組合企業の特質となった。この民法典をもってファシズムは協同組合の活動範囲を限定し、発展の可能性を抑えた。ここにおいて「相互不助性」は、協同組合によって生み出される便益を手に入れるために組合員が相互に交換する行為の総体とされ、「相互扶助目的」は長きにわたり協同組合企業の必須要件とされた。目的を欠いた協同組合企業は協同組合とは認められなかった。
 社会協同組合が現れるまではこのとおりであった。社会協同組合はそれまでの協同組合世界には存在しない創意として現れ、「相互扶助性」をもってしてではなく「連帯」をもってしても協同組合が成立しうるのだ、という考え方を定着させることによって伝統に楔を打ちこんだのである。
社会協同組合が付加する価値は相互扶助的便益でなくして公共的便益である。これはさまざまな資料から言えることであり、初期の社会協同組合が表明した意志から言えることである。最初の“社会連帯協同組合”の創立者ジュゼッペ・フィリッピーニが強調したところによれば、協同組合とは「直接的であれ間接的であれ自らのために協働するものではなく他者のために協働するものである」。
 初期の協同組合の多くは、その定款の連帯的性格のゆえに協同組合として裁判所の認可が下りなかったのである。そこでは「協同組合における社団活動の受益者は組合員のみであって部外者ではない(たとえ組合員が含まれていても部外者であってはならない)。社団活動の受益者が部外者であった場合、相互扶助性という要件が論理的に成立しない」とされた。
 著名な法学者ヴェッルーコリ(Piero Verrucoli,1924-1987)は、「相互扶助性」という伝統的な規定は客観的に見て狭隘な概念だとして新たな状況に対する「拡大相互扶助性」あるいは「外延相互扶助性」という概念を提出した。
 そしてついに社会協同組合が備える公共的便益性の特質は、1991年の法律第381号(社会協同組合法)をもって高く掲げられた。すなわちこの法律は、従来の法体系が想定しえなかった協同組合形式――障害者であれ健常者であれ組合員の利害の追及にとどまらず共同体の一般意志の追及を目的とする協同組合形式――を認知するために必要な法律であった。
 社会協同組合というのは特定の状況の中で可能な実践――だがしばしば非現実的な実践――によって純化される限りにおいて意義を有する、という考え方もある。歴史的な資料が物語る初期の社会協同組合の幾多の実例を見るならば、社会協同組合とりわけB型社会協同組合が、たんなる社会的扶助を克服して、社会的に不利な立場の働く人びとと責任を分かち合うことをめざし、助け合う人びとこそ互酬関係を理解し、すべての人が“役立つ”ことを自覚し尊厳を獲得するよう奮闘したことが注目される。障害者のための扶助の諸策は、残念ながら微々たるものであり、社会協同組合が打ち出したイニシアティブは障害者と健常者の同等尊厳というものであった。
 連帯に立脚する企業の典型としての社会協同組合は、農業労働者協同組合と同様に、イタリアで初めて構想され実践されたものである。それはイギリスで消費協同組合が、フランスで生産・労働協同組合が、ドイツで信用協同組合がそれぞれ構想され実践されたのと同じ意義を有している。

イタリアにおける協同組合の利点と欠点
 イタリアにおける協同組合の歴史の展開をたどって引き出しうる、協同組合の利点について若干ふれておこう。イタリアの協同組合は経営面で地域別・業種別に連合体に組織化されており、また政治面でナショナルセンターに組織化されているが、そうした組織規模別はネット状に協同組合企業が組織化されうる能力を示している。
 二大ナショナルセンターたるレ-ガコープとコンフコーペラティーブェは、政治的立場を異にしており、前者は歴史的に左翼に位置しており、後者はカトリック世界に結びついている。ネットワークを形成する能力は、協同組合事業を効率的かつ効果的に発展・推進させるための重要な要因である。
協同組合が独特の企業形態であり資本的企業と明確に区別される点は、組合員および従業員の企業経営への参加・関与を重視することである。また資本的企業の目的が利潤の最大化であるのに対し、協同組合はさまざまな欲求への対応を目的とし、企業経営における人間的・社会的側面を大切にし、地域との直接的関係性を維持するよう努める。これに加えて、協同組合は、自らの人的資源および関係者の自律と責任感を重視するがゆえに、取引関係者と顧客との関係性においても企業内部の関係性においても人間関係を大切にする。
 したがって協同組合にとっては、利潤は追求すべき目的ではなくして、自らの事業の資産を確立するのに必要な、自らの存立に必要な要因なのである。
協同組合のこうした側面はその歴史から引き出されることであり、とくに「協同組合・社会的企業欧州調査研究所」(Euricse)および「社会投資研究センター」(Censis)の最近の調査(それぞれ2011年および2012年刊)により明らかにされている。この二つの研究は、同時に協同組合の制約をも明らかにしている。それは、特に資金不足から来る企業革新と国際化の難しさである。

最新の資料(2011年)
 イタリアにおける協同組合の2011年現在の概観も2012年に刊行された「社会投資研究センター」の『第1回イタリア協同組合報告』に示されている。
 この報告書の基礎をなす商工会議所の企業登記簿電子データによれば、2011年末現在、イタリアは7万9,949件の協同組合が存在しており、そこに働く人びと(組合員および非組合員)は131万人にのぼっている。この人数は2007年に比べて8%増加しており、2008年以降の経済危機にもかかわらず協同組合における雇用が安定していることがわかる。
 同じく2011年における企業総数に対する協同組合企業総数の割合は1.5%、全企業における従業員総数に対する協同組合従業員総数の割合は7.2%となっている。ここ十年間における協同組合の力強い発展は、それ以外の企業形態の成長率を上回っている。
 業種別の協同組合についてみると、雇用機会の成長がもっともめざましいのは社会協同組合であり、4年間でおよそ14%の成長を示している。サービス産業全般も積極的な傾向を記録しており、2007年から2011年にかけて9.4%の増加がみられる。
 農業分野分野全体の就業者数のなかでの協同組合が占める割合は依然として大きいが、協同組合における就業者数は停滞気味である。生産分野(工業)での協同組合の従業員数は低下しており、この分野全体のなかでの協同組合従業員の占有率は2007年から2011年にかけて3.6%減っている。
建設業の協同組合は深刻な危機を経験しており、その従業員数はこの4年間で9.3%低下している。
協同組合の地域的分布についてみるならば、エミリア・ロマーニャ州は長期的に見て最も協同組合が発展した地域であり、州内の全就業者数の13.4%を協同組合が占めている。同じ基準から見てエミリア・ロマーニャ州に続くのは、トレンティーノ・アルト・アーディジェ州(8.1%)とウンブリア州(7.9%)である。

(本稿は、『イタリアの協同組合』「第八章 イタリアの協同組合を理解するための要点」より、イタリアの社会協同組合について要点をまとめたものです。)

(2014年5月26日 ブログ発表)
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