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川崎一泰『官民連携の地域再生―民間投資が地域を復活させる』勁草書房、2013年

本書は、レベルの高い学術書です。第1部は「地域政策の経緯と将来における制約」です。第2部は「人口制約下の地域政策」、そして第3部は「財政制約下の地域政策」という構成になっています。第2章と終章は書き下ろしですが、他の1章から8章はすべて研究雑誌への投稿論文です。
テーマの独自性についても、主題は「官民連携の地域再生」ですが、むしろ副題の「民間投資が地域を復活させる」のほうが、本書の内容にふさわしいと思われます。
検討手法においては、先行研究の方法を踏襲しており、とくに問題とすべき点はありません。その意味では学術的に正しい方法を選択していると考えます。計量経済学やコンピュータープログラムのスキルを使って、多彩な地域再生の研究をしている点も、本書の特徴の一つです。1章ごとのテーマごとにロジックが整理されて展開されており、さらにむすびでは、明らかにした点(政策的インプリケーション)と残された課題が整理されており、わかりやすくまとめられています。
計量経済学的アプローチで地域再生を検討した著書はそう多くはないと思うのですが、このようなアプローチも面白いと考えます。民間資本の活用が重要であることはわかりましたが、それをどのような形で実行するか、についての考察は今後の課題のような気がします。
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谷本圭志・細井由彦編、鳥取大学過疎プロジェクト著『過疎地域の戦略―新たな地域社会づくりの仕組みと技術』

過疎地域を取り上げた研究は多数ありますが、新たな地域の仕組みづくりを目的として、社会調査やシミュレーション、フィールドワークの手法でアプローチした研究はそう多くはありません。しかも、学際的に福祉、交通、経済、防災、観光、保健など多様な分野を取り扱っていることが本書の特色です。検討手法についても妥当な方法が採用されていると思います。ひとつひとつのテーマに関する社会実験の成果を確認している点でも、方法としては正しいと考えます。
 現場をよく分析できている点でも、鳥取県内の自治体と大学がうまく連携されている証左であろうと思われます。学術書というよりは、実践書という方が妥当だと考えます。
 共感できる点とできない点がありますが、人口増加政策を目指すという記述がある一方で、人口減少への対応が求められると述べていますが、人口増加策よりも人口減少に対する政策の方が最重要だと考えます。その意味で、「賢く縮む、成熟した街へ」の可能性を提言していることは、オリジナル性というよりも正しい提言だと考えます。
 本書は、鳥取県自体が、わが国が少子高齢社会に突入する中で、国内のフロントランナーとしての位置をもっていることを自覚して、自治体と大学が今後の政策を提言した点で、時宜に適った良書であると思います。

佐々木雅幸『創造都市への挑戦―産業と文化の息づく街へ』岩波書店、2012年

本書は2001年6月、岩波書店より刊行された『創造都市への挑戦』をもとにして、この十年の創造都市論の進捗を大幅加筆した新編集版である。著者は1999年3月末から2000年1月末までの十カ月間にわたりイタリアのボローニャ大学に留学しており、ボローニャの歴史的市街地の職人街の中にあるマンションに実際に住みながら「ボローニャ2000」を中心に、新しいミレニアムを迎えるイタリアの地域社会の様々な動きを記録し分析してきた。「ボローニャ2000」はボローニャ市民(約38万人)の文化に対する関心が非常に高い、そんな中規模都市で生まれた、総合文化事業である。総予算約1700億リラ(約90 億円)、その事業内容は主に、合計2千時間以上に及ぶ各種イベント(300のコンサート、230の展覧会、260のコンベンション、125のラボラトリー等)と、古い建造物の再利用による文化施設の充実(旧農業取引市場のマルチ・メディア図書館化・旧タバコ工場の大学関係施設化など)からなっている。まさに市を挙げた、一大事業である。
私が仲間とともに大学院修士課程でジェイコブズの著作を購読し研究の素材としていたことから、本書を手にしたのは2001年の刊行本のはずである。しかし当時の私の関心は都市よりも農村にあったことから読まずじまいであった。そのような事情からボローニャについて調べることもなかった。再度本書を手にするきっかけになったのは、私が2012年にフライブルクを訪問した後で、2013年にボローニャを訪問する前である。それは都市というよりドイツにおける協同組合、イタリアにおいては社会的協同組合の実際を視察するためであった。
本書においても文化協同組合に加えて社会的協同組合の取材調査にも力を入れ、環境関連分野についてもインタビューを試みている。著者が内発的発展論の視覚からボローニャと金沢市の比較研究を進めながら、文化と産業が両立する都市の在り方の研究から「創造都市」という言葉がまさに正鵠を射る概念として創造された。したがって、本書においてもボローニャと金沢が全体の中心となり、その後の著者の都市調査が創造都市論の補強をするという構造になっている。その一つに桐生市も入っており、まさに私も2012年夏に桐生市調査を行ったことから以前から何度も訪れたことのある田沢湖町などの文脈も非常になじみ深いものであった。
考えてみると、この5年間調査している岡山県倉敷市や複数回調査したイギリスのロンドン、そしてフランスのパリなどの訪問のことを考えると、私も農村調査と都市の調査を行っていたのだと今になって考えさせられた。しかし私の調査は著者が述べているような「創造都市」というような概念ではなくまちづくりであったり、地域変動論であったりと、未だにアプローチが覚束ないのが実際である。繰り返すと、最も当てはまるのが英国の社会的企業、ドイツの協同組合、イタリアの社会的企業といった括りの視点でのアプローチであったと思われる。これらをひとまとめにすると「非営利協同」という概念になるのかもしれないが、それだけでは割り切れないものを感じていた。それが新たな装いとなった本書を手にする動機となったことは間違いない。
ここ数年とくに感じるのはどこの都市や農村に行ってもグローバリゼーションの大波が大きく影響していることである。グローバリゼーションを背景にした国際都市に対置した創造都市という著者の概念は、間違いなく一つの概念として定着しつつあるように思われる。しかしそれすらもグルーバリゼーションの大波は飲み込む可能性を一方では感ぜずにはいられないほど、時代は変遷しているようにも思われる。
プロフィール

Author:ショートビーチ
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これから、私が読んだ本の紹介などをしてゆきます。

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